入院メモ 第2話

1:ヒヤリハッと

一般に、事故が起きる前には十回くらいのヒヤリとしたり、ハッとするような事件が起きているといわれる。
僕にもあった、最近では二ヶ月ほど前に同じシチュエーションで右目のすぐそばをクルマのドアにぶつけた。そのときは眼鏡に守られたから良かったが、ホッとすると同時に嫌な予感もした。

最近、よくクルマのドアに顔をぶつけるのである。
自分が思っているよりもドアは開いていなかったり、インパネの角に膝をぶつけたり、なんかタイミングと距離がズレている。老化による反射神経の衰えなのか、せっかちになってしまってドアが開くのを待ちきれないか、などと考えていたのだが、右目の視野が狭かったのではないかとおもうようになった。見えているつもりで実は見えていなかったのかもしれない。

今となっては確認しようもないが・・・
あれほどの兆候がありながらなぜ今回の事故を防げなかったのだろうか。

1、原因追求していない。ヒヤリハッとの時点で原因を追求しないで、あー危なかったで済ませたこと。
2、絶対事故に遭わない、起こさないという意志に欠けていた。長く生きてりゃ色々あるわ・・ってどこかで思っている。嫌なことは無い方がいいに決まっているのにまさか自分がそんな目に遭うとは思っていない。

まさに因果応報と言うべき。

 
2:病室

52才、職業ひきこもりの僕が病院のベッドで過ごす。正直に言うと少し楽しい。家内も目にする文だから理由は書かない。先週出張した家内を羨ましく思っていた、それが原因かはわからないが、僕も普段行けないところに来てしまった。

ベッドとロッカー、テレビ台、可動式サイドテーブル、パイプ椅子、有料テレビ

持ち込んだものはサンダル、下着、タオル、洗面具。
携帯、デジカメ、タブレット・・・今日、パソコンを頼んだ。

さて、看護師さんも若くて美人、対応も親切、眼科ランキングで日本一のこの病院にひとつ不満がある。

Wifiが無い。

職員のネットはいくつもあるのに、患者用のネットがないのである。ウッキー!一階のロビーには有料パソコンがあるというので行ってみた。午後はシャッター下りてんじゃん。

今時一時間いくらか知らんが金払って見たいテレビなんぞあるわけ無い、それよりもっと広い世界に自由に繋がるネットをなぜ解放しない。そうすれば入院していてもかなりの連絡がとれ仕事へのダメージが軽減できる。結果安心して治療に取り組める人もいるだろう。例えば個人事業のひきこもりのような人にはねぇ。

3:血圧

高血圧食というのが僕のために用意される。
最近の我が家の料理に比べると肉、魚のボリュームが大きい。味は人によっては不味いらしいが僕は美味いと思う、というかメシ以外に楽しみがないのである。大体、怪我して入院したが、元々体に問題があったわけではない。ひたすらベッドで眠る日々でも腹は減る、食えてしまうのである。

全く痩せる気配はない。

痩せないならばたぶん血圧も下がるまい、と言うのが僕の予想だ。血管内外の脂肪とかが少しでも減れば、血流に好影響を与え圧も下がろうと言うものだ。という完全な素人考えで坑圧剤をやめちゃって食事で血圧を下げる努力をしてきたのだ。

病院の高血圧食はまだあまい。
ニガゴリが無いんだから。

4:罰 (ばち)

世の中にはやっていけないことは、やってはいけないという掟がある。

「お天道さんが見ている」とか、「ご先祖さんに申し訳ない」などといって戒めているアレだ。これは現実に確実に存在している、少なくとも僕は体験している。僕は日本人だからそれをスピリチュアルなどといい加減な片仮名にはしない。

それは「罰 (ばちあたりのバチ)」である。

人としてしてはならないことをしたとき、バチが当たります。去年は現金だったし、今回は右目です。それが犯した罪に引き合うものかどうか、何となくですが合っているんですよねこれが。怖いです。普段の行いではないんです。ちょっとしたスケベ心で起こしたことを見逃さず、確実に機械的にバチを当てる。普段守ってくれている先祖の霊もこれには関わりません。

ちょっとしたスケベ心、ついうっかり、まあいいや
そういう時にバチが当たるよ。

5:病人なり

お世話になっている先輩(以前の上司)が見舞に来てくださった。何時もながら絶妙のタイミングで電話をいただき、怪我で入院をまっさきにお知らせする結果になり、恐縮である。
会社時代から、飄々とした雰囲気と緻密な戦術でいつの間にか仕事が完成してるという、最高の上司だ。
(いや、大好きな饅頭を頂いたから言うんじゃないですよ・)

そういう先輩をお迎えするのにこっちがベッドにパジャマってどうなんですか。

目は怪我しました、しゅじゅちゅもしました、生まれて初めての入院患者です。しかし、目以外はいたって健康なのでパジャマでベッドに座ってるのがなんか落ち着かない。もうちょっとこう元気無さそうにした方が良いだろうかとか考え出したら病人になりそうです。

気分転換で明日は綿パンにシャツで過ごしましょう。