頑張れ日本人


山東省は日本人にとって関係が深い土地だ。昭和初期には日本は鉄道の利権を持っていて青島や済南に一万七千人近い邦人が居たという。軍事的な衝突の歴史もある。済は中国でも最も古いとされる国名のひとつで太公望や菅包の交わり等の故事もこの近所の話だったように思う・・・思うのは、十八史略を中国で処分しちゃったので記憶が定かでないのだ。

ともあれそういう土地である。

もう7〜8年前のことだが、友人の実家に遊びに行ったとき、ここでは小坂さんを韓国人と紹介するけど悪く思わないでねと言われたことがある。日本人なら若干の緊張を持って赴く土地、とも言えるのだ。

僕には通訳もつかないし、関係者の出迎えも無い、完全単独行動だ。でもずっとこんな風だから特に気にもならない。タクシーでも、食堂でも、風呂屋でも必ずといっていいほど「あなたどこの人?」と聞かれる。「日本だ」と答えるとある人は日本の食べ物は美味しいねといい、ある人は黙る。釣魚島は・・・と話す人もいる。

しかし、僕は「日本人です」と答える。

韓国人じゃないんだしね。

幸い今までのところ、そのことが問題になったことはない。日本人がどんなものか?俺を見ろよ。

朝は中国人モデラーと同じように出勤し、一緒にモノを作り、一緒に問題を確認し、暇なときは箒で周囲を掃き、社員食堂でみなと同じ物を残さず食べ、一緒に残業して門の前で白タクを待ち、ホテルの横の食堂で静かに酒を飲み、お休みを言って部屋に戻り、椅子で眠り、朝方報告書をまとめ、また出勤する。

それだけのことだ。

ただモノを作りに来た人間なんである。「日本人」として普通に働き、普通に交流して来たのである。だから心配には及ばないですよ。


親切にしてくれたアウディの後部座席にはこんな雑誌が差してあった。